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雪に包まれた芸術の都

雪に包まれた芸術の都

冬は、静かな確かさをもって芸術の都に根づいていた。 澄んだ、光を含んだ寒さ。鋭いが、脅かすことはない。

雪は石造りの輪郭をやわらげ、人々の歩みを遅くする。道は不安定になるが、誰も本気で不満を口にしない。子どもたちは喜び、滑り、笑い、坂道を即席の遊び場に変えている。忘れられた飾りや紙灯籠の下には、年の瀬の祭りの余韻がまだ残っていた。

この都は、この宙づりの時間をあえて引き延ばしているかのようだった。

あなたは、淡い朝の光の中を歩いている。 一つひとつの情景に注意を払いながら。 この場所はまだ馴染みがないが、自分がここにいる理由は、はっきりと感じている。 急がされてはいない。 だが、確かに待たれている。

—— お越しになりましたね。

声は落ち着いている。抑制され、安心させようとも威圧しようともしていない。

振り返ると、そこに立っているのは新生(しんせい)景頼。 この都では、新生教授と呼ばれている人物だった。

暗い外套は雪の白さと対照的だが、その佇まいは自然と周囲に溶け込んでいる。彼は自らを誇示することなく、静かに観察している。その眼差しはあなたを測るものではなく、すでに芽生えていた姿勢を認めるかのようだった。

—— 今日は都も穏やかですね。
と教授は、少し間を置いて言う。
—— ゆっくりと歩く者を、好んでいるようです。

彼は、隣を歩くよう静かに促す。

道のりに急ぎはない。やがて賑やかな大通りは姿を消し、より落ち着いた地区へと移っていく。だが、静まり返ることはない。ここでは、声が空気を形づくっている。カフェでは会話が交わされ、書店の前では思索が重なり、芸術家や思想家たちが忍耐強く言葉を紡いでいる。

—— この界隈は、決して眠りません。
—— 季節ごとに、呼吸を変えるだけです。

木々の列の向こうに、邸宅が現れる。

大きく、しかし誇張のない佇まい。二階建てに屋根裏、雪をかぶったテラス。冬眠する庭園の向こうには、街の縁まで広がる敷地が続き、さらにその先で白い草原が森へと溶け込み、小さな湖が朝の光を映していた。

—— 旅の合間に、ここで過ごしています。

敷地内はすでに動いていた。使用人たちが静かな手際で邸を整えている。この場所が単なる私邸ではないことは、すぐに理解できる。展示や野外講義、芸術の催しが行われ、学生や愛好家、賢者や庶民が自然に集う。

—— 長く滞在することは、あまりありません。
—— ですから、この場所は私がいなくても在り続けるのです。

中に入ると、外の冷気とは対照的な温もりがあなたを包む。 書物が至るところにある。机の上、壁一面、積み重ねられた背表紙。それらは、まだ理解できない秩序に従っているようだった。大学で学んだ馴染みのある書もあれば、時代も土地も分からない文献もある。

教授は立ち止まり、あなたを見る。

—— あなたの応募書類は、確かに受け取りました。
—— 注意深く拝読しています。

少し間を置いて、彼は続ける。

—— 私には多くの肩書きが与えられます。
—— 制度には便利でしょう。ですが、人と向き合う場では、さほど意味を持ちません。

その視線はまっすぐで、厳しさはない。

—— ここにいるのは、恩恵でも偶然でもありません。
—— あなたの内に、すでに動きがあった。ただ、それを認めただけです。

そう言って、彼は階段へと向かう。

—— どうぞ、落ち着いてお過ごしください。観察する時間を。
—— 旅立ちは、予告された場所から始まるとは限りません。

邸は静かな気配に包まれる。 そしてあなたは、はっきりと感じる。 この場所が、すでにあなたを迎え入れていることを。

カゲヨリの帰りを待つ