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千の境界をもつ館

千の境界をもつ館

カゲヨリの帰還

朝はまだ始まったばかりの頃、カゲヨリは戻ってくる。

彼は一人ではなかった。

その傍らには、一目で人の視線を引きつけながらも、決して押しつけがましくない若い女性が歩いている。洗練され、上品でありながら、その歩みには穏やかで落ち着いた自信が宿っている。黒く長い髪は絹のように滑らかで、わずかに波打ち、光を受けて青みがかった微かな輝きを放つ。淡く薔薇色を帯びた白い肌に、空の色を思わせる優しくも澄んだ瞳が映える。

わずかに尖った耳が、彼女にエルフの血が流れていることを物語っていた。 人とエルフが調和した、自然で美しい存在。

彼女は温かな笑みを浮かべる――偽りのない、開かれた微笑みだ。

「お会いできて光栄です」 柔らかな声でそう言い、名乗る。
「アメリアナ・ファウシュフロールです」

彼女の佇まいからは、すぐに伝わる優しさがある。まるで、その場の空気そのものを和らげてしまうかのように。高い社交界に属する気品を備えながらも、そこに距離や硬さはない。

アメリアナは軽く頭を下げ、自然な調子で言葉を続けた。

「カゲヨリは、あなたのことをよく話してくれました」 少し言葉を選ぶように、間を置いてから。 「何よりもまず、その好奇心について。そして、多くの者が危険だと考える旅へと踏み出してきた、その勇気について……時には命がけとも言えるような旅です」

彼女の眼差しは、静かな敬意を帯びて柔らぐ。

「それから、あなたの忍耐強さについても。彼のように細部まで徹底する思考に寄り添える、その稀有な力について」 かすかな微笑みが浮かぶ。 「カゲヨリは、思いついたことも、立てた仮説も、必ず最後まで突き詰めます。その歩みに付き合える人は、そう多くありません」

彼女はしばし、穏やかにあなたを見つめる。

「それだけで、多くのことが伝わってきます」

返事をする間もなく、カゲヨリが口を開いた。

「残念だが、少し席を外さなければならない」 静かな声でそう告げる。
「急ぎの用件がある。だが、夕食までには戻る予定だ。幾人か、重要な客人も招いている」

彼の視線が、アメリアナに向けられる。

「それまで、彼女が君の相手をしてくれる」

そして、いつもの落ち着いた口調で付け加えた。

「安心して任せられる」

人目につかぬ通路

カゲヨリは、主要な出入口から外れた、ひときわ目立たない入口へとあなたを導く。 それは簡素で、ほとんど隠されるような道――執務に携わる者や管理を担う者、そして館の運営を支えるために許可された者たちのための通路だった。

通された部屋は、温かく、明るい。広さは中程度だが、その先に広がるであろう壮大な空間を予感させつつも、決して脇役の場所には感じられない。人とすれ違うこともなく、窮屈さを覚えることもなく、自然に歩ける。

装飾は控えめながらも洗練されている。緑の植物が命を添え、選び抜かれた絵画が壁を彩る。小さな受付では、数名の案内役が静かに動き、関係者を導き、情報を記し、低い声で言葉を交わしている。

片隅には、落ち着いて待つことのできる小さな談話スペースがある。飲み物が用意され、自由に手に取れる書物も並んでいる。許可された人々の行き来はあるものの、そこに慌ただしさはない。

カゲヨリは足を止める。

「ここで失礼する」

そしてアメリアナに向き直る。

「任せた」

「ええ、いつも通りに」 穏やかな微笑みで彼女は答える。

短い別れの言葉の後、カゲヨリは去っていった。
静かな統率力と……なお解き明かされぬ謎を残して。

ふたつの瞬間のあいだ

しばらくの間、あなたはそこに立ち尽くす。

部屋を眺め。 柔らかな足音や落ち着いた声に耳を澄まし。 時間が止まったかのような、淡い夢想に身を委ねる。

この小部屋は執務者たちの受付と直接つながっており、目立たぬ通路の先には、館の壮麗さを陰で支える、静かな仕組みが息づいているのを感じ取れる。

やがて、ほとんど気づかぬほど自然に、意識が戻ってくる。

アメリアナは、今もあなたの隣にいる。

「行きましょう」 彼女はそっと言う。 「この館の、本当の中心はこの先です」

彼女に導かれ、主空間へと通じる人目につかぬ廊下を進む。

ほんの数歩。

視界が、一気に開ける。

壮麗な迎賓の広間が、あなたを待っていた。

大広間へ進む